
海と町を見下ろす高台の3棟のコンテナハウスがOURoom。
まるで秘密基地のような佇まい。中に入ればそのまま住むことができる住居装備が揃う。一人でぼんやり時を過ごしてもいい。子供たちと庭先で焚火をするのもいい。

プロフィール 葦原知さん/38歳 (神戸出身)現在は大手メーカーにリモートワークで勤務し、週に1度ほど東京のオフィスに出社。土日には、関係人口の増加を目指した別荘サブスクリクションサービス『OURoom』の運営に携わる。
葦原亜由美さん/36歳 (水戸市出身)大学卒業後は理科の教職に就くが、結婚を機に退職。現在は3人の子育てをしながら、別荘サブスクリプションサービス『OURoom』の運営にも携わる。
暮らしの原点は
サンセバスチャン
2人の心に残る旅先はスペインのサンセバスチャンだと言う。その魅力を亜由美さんはこう語る。「観光とはちょっと違うかな。観光地を慌ただしく回るのではなく、ただいつもの暮らしのように過ごすのです。朝起きて2人でランニングをして、時にはブランチからお酒を飲み、夕方からは街を歩く。
いつもと変わらないことをしているのに、海が見えて、美味しいものがあるサンセバスチャンがとても心地良かったのです。日常に海のある暮らしがあったらいいな~と思う原点はそこにあったのかな」と。

今、できることをしよう
結婚した2人は千葉県の流山市に住まいを構え、第1子の男の子を授かる。知さんは仕事のために早朝から夜遅くまで家には帰れない。子どもの顔は寝顔しか見ることができない日常が当たり前になっていた。
しかしその後、葦原家に転機が訪れる。コロナ禍の影響で会社がリモートワークの働き方に変わったのだ。それによって家族と過ごす時間が増え、これまで住む場所や生活スタイルを会社中心に考えていたことに気づかされた。「今住んでいる場所で暮らさなくてもいいんじゃない?海のある街で暮らしたい」という思いが強まったという。
大洗での二地域居住を決めるのに時間はかからなかった。亜由美さんの故郷は水戸市。隣町の大洗には小さいころから海遊びをするのに家族でよく行っていたという。家族との思い出がいっぱい詰まった大洗というのも、亜由美さんの背中を押した。早速、月の数日を大洗で過ごす生活を始めてみた。ビジネスホテルに泊まり、食事は外食をした。海のある街独特の雰囲気や美味しい食事には満足していたが、ホテルに宿泊するには費用がかかるうえ、“暮らし”には程遠かった。「金銭的な問題と居心地の良さを解決するには?」この時の経験がサブスク別荘サービスOURoomの構想に繋がった。移住の準備を入念に行い、構想から1年半かけて、ようやく2022年3月に大洗町の住民となる。




葦原亜由美さんから見た大洗
3人の子育て中心の毎日ですが、夫がリモートワークなので、子育てや家事を一緒に行うことができています。
この町で一番嬉しかったのは、どこにいても大人たちがニコニコしながら子供に声をかけてくれることです。「子は宝だよ」って言ってくれた人もいました。以前住んでいた都市は子どもが溢れているため、子供のいる景色が良い意味で自然で、悪い意味で当たり前になっているんでしょうね。その反面、大洗は子供の数が少ないんです。「未来へのバトンをつなぐ大切な人」という意味で地域の子供を大切に思う気持ちが強い町。その愛情によって育まれる子供の成長が楽しみですね。

都会にいると、子供連れだとつい遠慮してしまう場面が多々あったのですが、この町では全くそんなことはないんですよ。それに「ごはんおかわり~」って、凄い食欲です。子供も美味しいものはわかるんですよね。買い物も楽しみのひとつです。素材の良さと鮮度の高さ。スーパーではなくて、商店街のお店に行くことも多いですね。お魚屋『魚結』さんでは新鮮な地魚が店頭に並び、その場で下してくれるのが嬉しくて、どれを買おうかと毎回悩んでしまいます。手巻き寿司が大好きな子供たちにも好評です。
お肉屋『鳥孝』さんは、散歩がてらによく家族でお伺いします。お肉にこだわりのあるお店で、本当に美味しいです。焼き鳥や唐揚げをその場でいただくのが葦原家流です(笑)。自宅でつくる摘果メロン(間引いた小さなメロン)の浅漬にもはまっています。旬のものを食べるだけではなく、摘果についても子供たちに教えてあげられる。まさに食育ですね。
長男は今年から小学生。下の子達は保育園にお世話になります。うちは駅からもスーパーからも商店街からも徒歩圏内のため、自然豊かでありながら生活には不便を感じていません。
ただ、成長するにつれ学校や習い事等で行動範囲も広くなるので、車による送り迎えは必須になります。これからも夫婦で協力してひとつひとつ前に進みたいです。


葦原知さんからみた移住
移住となると、住居・働き方・子育ての環境の確保等が必要になります。一つでも欠けると生活は成り立ちません。しかし、大洗の場合は移住先として地理的に優位性があります。
県庁所在地の水戸市に隣接していて、電車や車でのアクセスも非常に便利です。水戸市やひたちなか市など周辺エリアを含めると、暮らしや行動の環境が整っており、日常生活の中で多くの可能性を感じることができます。
私は週に一度ほど東京のオフィスに出社していますが、水戸から特急電車を使えばわずか1時間半で到着でき、十分に通勤可能な距離です。
また大洗には、豊かな観光資源があり、普通に暮らしていく上でもポテンシャルのある町だと考えています。
私自身、仕事は変えずに、自然豊かな海のある街での生活を楽しむことができています。一日の終わりに家族と一緒に夕日を眺める暮らし。
何も諦めない暮らしがここにありました。



葦原さんからの
“もうひとつの選択”
私たちは元々、移住ではなく二地域居住を考えていました。しかし、その生活を持続する難しさや金銭的な課題から、「二地域居住をもっと滑らかにしたい」という目標を掲げ、その実現のために移住を決断しました。
いつもの暮らしを、いつもとは違う場所で過ごすこと。自分の居場所がふたつあっても良いのではないかと思います。集中して仕事をするための場所、家族と週末だけ気軽に過ごすための場所、日常の先にあるもうひとつの場所がここにあります。ライフスタイルが多様化した今、移住だけではなく、こうした選択肢があることも大切だと感じています。
このような暮らし方をする人が増えることで、大洗町にとっても「関係人口」の増加につながるのではないかと思っています。
