海の町に住む それぞれの移住|RIDE ON MY WAY Oarai Life

選択肢は
ひとつじゃない。
もっとライトな暮らし方があってもいい

萬里小路忠昭さん 37歳(牛久市出身)、恵さん 39歳(横浜市出身)、長女 1歳10カ月(2025年3月現在)

2025年4月で丸3年目になる“大洗町と神奈川県茅ヶ崎市との二拠点生活”を満喫している萬里小路さん家族。二人は「心の中に、今を楽しむコンテンツ」をたくさん持っています。多い時は月の半分を大洗で過ごしながら、外から見た独自の視点で大洗の魅力発信をし続ける“までさん”(萬里小路さんのニックネーム)。仕事柄、移住の暮らし方や関係人口としての関わり方も熟知しているプロ目線から見た大洗の可能性を語ってもらいました。

プロフィール 萬里小路 忠昭さん/37歳(牛久市出身)大学卒業後、ゼビオ(株)で店頭販売・EC立ち上げ、店舗プロモーション等のマーケティングの仕事に関わる。2015年には社会人向けデジタルコンテンツの専門職大学院のデジタルハリウッド大学大学院に入学し、DCM(デジタルコンテンツマネジメント)修士を取得。2018年GMOアドマーケティング(株)に転職。2020年独立、現在は官公庁の地方創生に関わる事業を軸にコーディネートやインタビュー、リサーチ、コンテンツプランニングなどの仕事を手掛けながら、2022年より『大洗町地域おこし協力隊』として活動してきた。

萬里小路 恵さん/39歳(横浜市出身)大学卒業後、人材サービスの会社で法人営業やキャリアアドバイザー、新卒採用の仕事に携わり、現在は官公庁と連携して地方と東京圏の人材を繋ぐ事業の企画運営をする。夫の忠昭さんとは付き合って4か月で電撃結婚、現在(2025年3月現在)は育休中。プラス思考で感性豊かな恵さんと論理的思考で分析好きな忠昭さん。性格が真逆の2人だというが、その化学反応が新たな価値観と行動を生む。地域創生の活動は2人が出会ったことからスタートした。

『地域創生』活動の原点

恵さんの友人からの誘いで、徳島県上勝町と神山町へのツアーに参加したことが『地域創生』への興味の始まりだった。「特に人口減少・少子高齢化が進む数千人の地域でも、主体性を発揮し、新しいアイデアでイノベーティブなことをやろうとしている人や、私のような外からきた人と地域の人を繋ぐコーディネートをしている人の姿を見て胸が熱くなり、同時に、私自身のこれまでの経験を地域創生に生かしてみたい!と思ったんですよ。妻が地域創生に関わる仕事をしていたことも影響したかな」とまでさん。
その2ヶ月後の2021年6月、までさんは自治体が取り組む“地域創生の仕事”を請けることになる。人手不足の課題を抱える地域の企業と都市部などで経験を積んだ会社員やフリーランスの人を複業で繋ぐプログラムの事務局や、地域創生に取り組む自治体や企業を取材する仕事だ。そんな中、ふと「もう少し地域づくりの当事者として活動したい」と思うようになり、大洗へと繋がる。

関係人口を増やすプログラム

大洗町との関係は、2022年1月から3か月間にて開催された大洗町の地域課題解決プログラム「Create Owarai(クリエイト大洗)」に応募したことから始まる。この3か月のプログラムは、「酒蔵」「砂浜」「キャンプ場」の3つのテーマから、大洗の新たな観光コンテンツをつくることがミッションだったという。この体験がさらにまでさんを大洗町の魅力に引き込んでいくことになる。
その後2022年5月から3年間、町からの委託で地域おこし協力隊に着任し〝まちづくりの当事者〟として活動は続く。活動内容は、「町の魅力発掘・発信」、「関係人口創出」、「移住定住促進」という3つの柱を軸にした町と関わるプログラムの企画運営だ。例を挙げれば、①ウェルビーイング(身体的・精神的・社会的に良好な状態)を見つけるまち歩きイベント②サステナブルを見つけるワーケーションプログラム③二地域居住をしたい人向けの居住体験ツアーなど、これらの活動が多くの人たちを巻き込んでいった。

すごいぞ!大洗のポテンシャル恵さんからみた大洗…

大洗に来て、日常生活で困ることはないです。車を持たない生活をしているけれど、徒歩圏内で普段の生活が十分に成り立ちます。自宅が駅から近く、スーパーにも歩いて行けるし、午前中は子供を連れて近所の「親子ふれあいセンターきらきら」へ遊びに行くのがルーティンに。親子ともどもお友達もできました。近所の「桜道公園」は私たちには気分転換のお散歩にはちょうどいい場所です。その帰りに、町の洋食屋「食堂さくら」さんでランチを楽しむこともあります。すっかり顔なじみで常連になっています(笑)。お気に入りは名物オムハヤシ。「惣菜かじま」のズワイガニたっぷりのコロッケやお弁当も美味しい!なにしろ、海が近いので、お天気さえ良ければのんびり歩きます。時間がゆっくり流れ、人が優しく、ウェルカムな雰囲気のこの町が好きです。時々、ひたちなか市や水戸市の大型スーパーに行くこともありますが、その時は大洗駅前のカーシェアを利用しています。

までさんからみた大洗

町での移動はもっぱら自転車ですね。ちょうどよい運動にもなります(笑)。大洗に来る度に役場や町の事業者さんを自転車で周って近況を聞いたり雑談をしたりしています。そのコミュニケーションと都心とは違う景色の中で、心も身体もリフレッシュできるんです。
実際に移住した方や活動を通じて出会った移住希望の方の傾向としては、サーフィンや釣りなどの趣味を楽しみたい、テレワークなどで時間や場所にとらわれずに働きたい、大洗町でお店を出すとか事業を興したい、セカンドライフを海のある町で過ごしたいという人たちです。ただ、実際にその地で暮らすとなると、住む家や仕事をどうするか、子育てや医療機関へのアクセスはしやすいかなどの障壁があるので、そのあたりは小さな町だからこその利点を活かし、自治体や地域の人が連携してサポートができると良いなと思っています。大洗は海・川・湖に囲まれ、保養地としての歴史がある観光地でありながら、都市機能が充実した茨城県庁所在地の水戸市やひたちなか市と隣接する地理的なポテンシャルがあります。町単体ではなく広域で捉えると、より色々な暮らし方や働き方の可能性があることが、移住する人にとても心強いことではないでしょうか。

移住前に、町とライトに関わってみる

いきなり移住という選択ではなくて、まずは地域と多様に関わる「関係人口」として町に関わってみる方法もあると言うまでさん。
「地方圏は、人口減少・高齢化などにより、地域づくりの担い手が不足している現状から移住者を増やしたいと考えると思います。その上で大事なことは、色々な角度で大洗の魅力やすばらしさ、時には問題点を共有しながら行動してくれる地域内・外の人を増やすこと。この人たちの力が町に変化をもたらし、その変化が移住したい人たちにも波及していけばいいなと思っています。私自身、個人と社会の接点と循環をつくることを常に心がけています。この本を読まれて移住に興味を持たれたら、まずは、スモールステップから始めてみることをお勧めします。町に訪れて歩いてみる、ふと気になったお店に入ってお店の人とたわいもない話をしてみる。そこから大洗では毎週のように色々なイベントがあるので、参加してみる。そのきっかけの接点と関わりの循環づくりが関係人口を増やす本質で、その延長線に移住やその土地での暮らしがあるんじゃないかな」と熱く語るまでさん。

大洗には気持ちが通じ合う仲間がいる

この3年間で得たものは何かと聞いてみた。
恵さんは「同じ海の街・茅ヶ崎市とはまた違う感覚で近所の人の温かさや親切心に触れると、まるで実家がある町のように感じます。この優しさ溢れる町で知り合った方々から多様な生き方や価値観があることを学び、自分の人生の中で、会いに行きたい人や場所が増える経験となりました。これからも二拠点生活をしながら、多いに愉しんでいきたいと思っています」と。
までさんは「私の場合は大洗町での地域づくりの仕事を通じて、大洗で事業を営む様々な方との出会いから大きな学びがありました。その中でも、誰かがやってくれるではなく、自分たちが主体性を持って町をよくしていこうという当事者意識の高さにとても刺激をもらいました。大洗の町と人の魅力をより多くの方に知って欲しいという思いが私の活動の推進力になっています。その前向きな考え方や気持ちが通じあっている仲間がいるということは心強いです」と結んだ。